カデュメル時代の鎧

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{s35}カデュメル時代の鎧{/} {np}

バドス・ウィンタースプーン著{np} 内戦が終わってから30年となる年に私はふと一つの学究的な疑問を持った。そしてそれを10年間研究し、その研究がついに実を結ぶことになった。
狭い範囲では私という一個人の学問的好奇心を満足させた研究であり、少し範囲を広げると私が属すウィンタースプーン家の様々な研究の発展に役立つだろうと思う。
{np} さて、長年大地の要塞や石化都市はもちろんのことルクリスやその追従者たちに関連した場所をくまなく探索して下した私の結論は次の通りである。
また、これはカデュメル国王崩御後に編纂された内戦期の記録ともつじつまが合い、全く矛盾がないと感じる。
結論から言うと、内戦期に起きた戦いにおいて反乱軍と国王側の軍隊の間に一般的な武装の差は存在しなかった。{np} 双方の武器と鎧、軍需品はその質において如何なる違いもなかったと思われる。
カデュメル国王側の兵力のほうがはるかに大きかったとは言え、大地の要塞やその周辺都市(今は石化都市と呼ばれる)だけを守ればよかった反乱軍側の立場を考慮すれば{np} 国王軍の兵力はそれほど負担にならなかっただろう、というのが私の結論だ。
古来の全ての兵法書にもある通り、攻防の比率は小さくは3対1、大きくは10対1まで防者が有利なのである。そのうえ大地の要塞のように英雄ルクリスが編み出した要塞を籠城拠点と考えるならば、20倍の兵力を持っていたとしても攻者の立場では十分と言えないのが軍事学者たちの通説だ。
{np} ただし看過できない事実は、カデュメル国王側の軍隊が単純に正規軍としての利点とそれに伴う兵力の相対的優越性のみを持っていたわけではない、という点だ。
当時も今も王国の戦争は、たとえば千年前の戦争とはその戦術において大きな違いが存在する。{np} 軍事学でも多くの発展があったのだが、中でも最も変化があったのは昔とは比較にならないほど発展した魔法学と錬金術だ。
ウィザードや従軍司祭たちがどれだけ戦争に介入するかによって、現場の指揮官たちは今までは考えもしなかったような多くの要素を念頭に置く必要がある。{np} そしてルクリスが、カデュメル国王の軍隊と戦う際に最も神経を使うべきことも実はこの部分にあった。
{np} 前述したとおり、内戦期は双方の武装やその他装備、そして兵力の差が無意味だったとは言え、正規軍であるカデュメル国王の軍隊に属すウィザードや司祭の数は相当なものだったと推測される。
{np} ルクリスの師匠であるメイバーンの影響力により多くの司祭たちが従軍を回避したとは言え、それでも相当数の従軍司祭が存在し、ウィザードたちはルクリスと何の縁もなかったため多数が自由に参戦した。{np} 一般的な軍装備と兵士では差がつかない状況でウィザードの大挙参戦は戦況に多大な影響を及ぼすはずだったが、実際にはそうならかったということは周知の事実である。
{np} このような現象については昔から様々な分析が行われてきた。ウィザードたちをうまく活用することができなかった無能なカデュメル国王を愚かと批判する見方があるかと思えば、ルクリスの卓越した勇気が全てを克服したという叙述も存在する。
{np} それらの見解にも一理あるが、この研究の結果、私はそれに対して一つ付け加えたいことがある。それは、ルクリスと彼の軍隊が使用した鎧、中でもルクリスの鎧に関する真実である。{np} これまでの研究結果から導いた結論は以下の通りだ。魔法がルクリスとその追従者たちに効かなかった最大の理由は、彼らの鎧が魔法に対して極度の耐性と抵抗を持っていたからである。
{np} つまり、ルクリスと彼の軍隊の鎧は強力なマナメタルで作られており、ウィザードたちの攻撃魔法を無視できた、という主張だ。
このような見解は荒唐無稽に聞こえるかもしれない。{np} 魔法に対してそれほど強力な抵抗力を持つマナメタルがあるなんて聞いたこともない上、たとえそのようなマナメタルが存在するとしても、それを指揮官であるルクリスだけでなく部下たちにまで配給していたなんてあり得ない話だ。
このような反論は十分聞こえてくるだろうし、極めて妥当な意見とも言える。{np} この本の筆者でも、他の人間がこのような主張をしたら合理的な反論だと思うだろう。
そのうえこの主張を裏付けするには、我々がよく知っている物理的現象に逆行するもう一つのとんでもない仮定を追加しなければならない。
{np} 筆者も自ら研究して得た結論でなければ、認めるのが難しい仮説である。
その信じがたい仮説とは、特定のマナメタルは非常に低い温度で凍らせても壊れないというものだ。鋼鉄のような金属は一般的にとても硬いと思われているが、実は温度に対して非常に弱い。いくら硬い金属でも超低温で凍らせれば、ちょっとした衝撃でひびが入ったり粉々になるのだ。
{np} しかしルクリスが採取して使用したマナメタルは、自然界で唯一このような現象に反する性質を持ったマナメタルだったと考えられるだろう。
{np} 大地の要塞やそれ以外のルクリスにまつわる場所を訪問して導いた結論は以下の通りである。ルクリスがこの正体不明の少量のマナメタルを自身の追従者たちの装備に使用し、そんな少量のマナメタルでも多くの対象を狙う国王側のウィザードの広域魔法に十分耐えられた、という仮説だ。
{np} 焦点をルクリスに戻そう。彼に浴びせられた強力な魔法の無用性。特に彼の最期の瞬間に国王のウィザードたちは何もせず、多数の兵士たちが犠牲となり、結局リディア・シャッフェンの弓に頼らなければならなかったという記録を参照すれば、このような仮説はより説得力を増す。
{np} それ以外にもいくつか発見された手がかりから推測すると、当時ルクリスが着ていた鎧の魔法抵抗力は上述したマナメタルを大量に使用して製造したものに違いない。

そのうえ当時クリオマンサーたちが最も積極的に彼を攻撃した点を考慮すると、この鎧とそれを構成するマナメタルの冷気に対する抵抗力は、想像を絶する水準だったと思われる。{np} よって筆者はこのマナメタルを暫定的に'アイスメタル'と命名しようと思う。

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カデュメル国王時代の鎧に関する研究書。読むことができます。

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