エミネント物語1

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 ある若い青年が家に帰っている最中だった。
彼を見た人たちはその青年が自分たちの領主の息子だと気づいて礼儀正しく挨拶をした。そんな彼らに青年は優しい笑顔で会釈した。
普通の貴族とは違って礼儀正しくて謙遜でハンサムな青年は領地の民たちから愛され、また尊敬されていた。{np} 特に昨年、領地に伝染病が広がった時、自分の家族より領地の民たちを優先して多くを救ったことは大勢から高い評価をもらった。また父親を除いた家族全員を失ったことによって領地の民たちからより深い同情と愛情を受けるようになった。
領主の邸宅に行き来している人たちの話によると、領主も家族を失った衝撃で一時はかなり弱まっていたが、息子の献身的な支えによって回復できたそうだ。
領地の民たちは彼らの次の代の領主になる者が素晴らしい人格を持つ若者ということで彼が領主になることを楽しみにしていた。{np} このエミネント家の唯一の後継者である青年は邸宅に帰ってきてからも品のある優しい態度を変えず、邸宅で働いている使用人たちにも常に優しい笑顔で接したのだ。
しかし、そんな優しい笑みは彼が父の部屋に入り、父の世話をしていた使用人たちが部屋からいなくなると完全に消えた。
青年は聞いている人がいないことを確認した後、ベッドに横たわった父に近づいて言った。[私の献身っぷりを周りに十分訴えることができたからもう逝ってもらいます。]{np} それを聞いた父は枯れた声で聞いた。[どうして我が家にこんな真似をするのだ?]
青年が答えた。[こんな真似?私はあなたの家を長く繁盛させ、世に名を馳せるようにします。むしろ、私があなたの家を選んだことにお礼を言ってもらわなければならないのですが。]
{np} [貴様…よくもそんなことを…息子と娘、全員を殺しといて…。]
[ああ、それは仕方なかったのです。私が本来人間ではなく、ただこの青年の姿を借りた存在だということに気づくかもしれない人たちを生かしておくわけにはいかなかったから。ということで、あなたもこれ以上生かしておくわけにはいきません。あなたの領地と爵位を受け継ぐ準備は整いました。]
[貴様の正体を暴露できれば…。]{np} [以前も同じことをしようとして罪のない使用人だけが犠牲になったのでは?それに正体を暴露と言っても、私が人間ではないこと以外何も知らないじゃないですか?]
[貴様は一体何者だ!]
[特別に教えてあげましょう。私はあなたたちが毛嫌いする魔族、その中でも魔将という存在です。名前は…とりあえず今はあなたの家であるエミネントという名で十分でしょう。あなたが死んだらエミネントは私一人しかいなくなる。]
[魔将がどうして人間の爵位と領地を狙うのだ!]
[これ以上あなたに話す必要もないですし、時間もありません。]{np} そう言って青年は手を差し出して相手に軽く触れた。今は気を失っただけだが、しばらくしてから人を呼んだ時は多くの使用人に看取られながら安らかに息を引き取るだろう。
この時までエミネント家の唯一の構成員となる青年は自分の考えを整理する時間が持てた。
ジェスティからライマと彼女の啓示を追撃する任務を受けてから、ライマが人間を利用した計画を立ててそれを実行していると分かった時。彼は他の魔族とは違って彼もまた人間を利用する計画を立てたのだ。{np} 賢いレキシファーが人間の王ごときが残した墓に閉じ込められて何百年の年月を無駄にしているのを見て、どんな魔族も人間とその社会を利用しようとしなかったことがむしろ不思議で仕方がなかった。
魔族のプライドと性向上、考えられない発想をするという点から彼は他の魔族と少し違った。
この時はまだ知る由もなかったが、将来ライマが選択した守護者を窮地に追い込んで殺した初めての魔族になった原点はこの時だったかもしれない。

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